ヤマルLNGが全面稼働、政府は北極海航路の輸送量増加を期待
(ロシア)
欧州ロシアCIS課
2018年12月12日
ロシア民間天然ガス採掘大手ノワテクは12月11日、同社がトタル(フランス)、CNPC(中国)などとロシア北西部・北極圏で進めるヤマルLNG(液化天然ガス)事業の第3トレイン(生産設備)が稼働し、LNG生産がフルキャパシティーに達したと発表した(注1)。
同事業の年間LNG生産量は1,650万トンで、2017年12月に初出荷、2018年8月には第2トレインが稼働している。ノワテクは「(第2トレインの稼働後から)記録的な期間」での第3トレイン稼働を実現したとしている。事業の実現には650社以上のロシア企業と日系企業を含む外国企業が参画した。ヤマルLNGの全面稼働により、世界のLNG市場でのロシアのシェアは10%に拡大する。
ヤマロ・ネネツ自治管区サベッタで開催された稼働式典に参加したドミトリー・メドベージェフ首相は、現地で「北極圏の発展に関する政府会合」を開催。「北極圏発展問題に関する政府委員会」の構成を改編する政府指示(2018年12月11日付第2742-r号)に署名し、ユーリ・トルトネフ副首相を議長として、より集中的に問題を検討できる体制を整えたことを発表した。また、ヤマルLNG事業から出荷されるLNGは北極海航路の輸送量増加に大きな役割を果たすことと、資源開発と同時に鉄道などの関連輸送インフラの開発を進めることの重要性を強調した。
アレクサンドル・ノワク・エネルギー相は、政権の2024年までの内政目標(2018年5月8日記事参照)に関連して決定された北極海航路の輸送量を8,000万トンまでに引き上げる目標(2018年10月17日記事参照)の具体的内訳に言及し、ヤマルLNGによる輸送量が1,800万トン、現在、事業検討が進行中の「アークティック(北極)LNG2」による輸送量が2,160万トン、クラスノヤルスク地方でのネフチガスホールディングによる原油出荷とボストクウゴリによる石炭出荷が2,000万トン、さらには、カラ海でロスネフチが開発する原油・天然ガス田「パベダ」による出荷量6,000万トンの積み上げ(注2)も想定していることを明らかにした。また、ボストクウゴリへの支援として、同社が開発を進めるタイミル半島の優先的社会経済発展区域(TOR)指定を要望したほか、中・大型のLNG生産設備の国産化(2018年1月22日記事参照)を推進する方向性を示している。
報道によると、同じく会合に出席したノワテクのレオニド・ミヘリソン会長は、現在ノルウェー北部ホニングスボーグ沖合で行われている、(サベッタから出荷された)LNGの積み替えについて、LNGの生産量が想定より多いこと、ノルウェー側に対して西側諸国からの(対ロシア制裁の)圧力が強まっていることなどから、現在拡張が続くムルマンスク港(2018年10月12日記事参照)でのLNG積み替え基地建設計画に対する政府の財政支援を、前倒しするよう要請したとされる(「RBK」12月11日)。
(注1)今後、ロシアの技術を利用した第4トレイン(生産量:年100万トン)の追加建設も予定されている。
(注2)事業の立ち上がりの遅れなどが想定されているとみられ、合計は8,000万トンにはならない。
(高橋淳)
(ロシア)
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