CFIUSの権限強化に関するセミナー開催
(米国、日本)
米州課
2018年10月10日
ジェトロは10月9日、元米国財務次官補で米外国投資委員会(CFIUS)議長も務めたクレイ・ローリー氏を講師に招き、「米国の対内投資規制の強化について」と題するセミナーを東京で開催した。
外国企業による対米投資を審査するCFIUSは、8月13日に成立した「2018年外国投資リスク審査現代化法(FIRRMA)」によってその権限が強化された(注1)。ローリー氏はセミナーで、今回のCFIUSの権限強化の背景には「中国からの投資の急増」があるとの見解を述べ、このことから、中国企業との合弁企業を有している日本企業が今後対米投資を行う場合、CFIUSによる審査が厳しくなる可能性を示唆した。
審査対象には、安全保障に関わる重要技術・重要インフラ・機密性の高い個人情報を有する米国企業への非受動的投資(注2)などが加わった。米財務省は今後、これら審査対象の定義を明確にし、具体的な規則を公表しなければならない(注3)。ただし、ローリー氏は「この定義の明確化が、非常に難しい」と指摘した。同氏は、顧客の住所や名前などが機密性の高い個人情報に該当する場合、日本企業が米国の百貨店を買収する際にも審査対象となるのか、との疑問を提示し定義の明確化の難しさを指摘した。
質疑応答では参加者から、中国と合弁企業を有している場合、日本企業が米国企業を買収する際にCFIUSの審査に影響を与えるのか、との趣旨の質問が出た。ローリー氏は「中国との合弁企業の有無だけによって、米国へ投資できないということではない」と述べ、中国の合弁企業の経営実態や、買収先の米国企業の最新のテクノロジーと中国の合弁企業との関係性について説明できるようにしておくことが重要との見解を述べた。
セミナーには商社、メーカー、金融、物流、不動産など幅広い業種から130人以上が参加し、日本企業からの関心の高さがうかがえた。
(注1)CFIUSの審査権限強化の詳細は、2018年9月3日付地域・分析レポートを参照。
(注2)少額出資であっても、米国企業が保有する機密性の高い技術情報・システム・施設などへのアクセスが可能になる投資や、役員会への参加などが可能な投資は対象となる。CFIUSのウェブサイトも参照。
(注3)財務省は、これら規則を法律施行日である8月13日から18カ月以内に公示しなければならない。
(赤平大寿)
(米国、日本)
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