新たな貿易ルールの形成、日米の役割をセミナーで議論
(米国、日本)
ヒューストン発
2018年10月15日
ジェトロは10月12日、「アジア太平洋の経済統合と日米の役割」と題するセミナーを米テキサス州ダラス近郊で開催した。同セミナーでは、日米が協力して新たなルール形成を進めていくべきといった議論が交わされた。
基調講演を行った石毛博行ジェトロ理事長は、米中の貿易戦争の深刻な影響に警鐘を鳴らすとともに、アジア経済統合と経済連携協定の現状を説明した。新たな技術やサービスが急速に進展する中、日米が協力して電子商取引、データ取引についてルール形成を進めていく必要があるのではないかと問題提起した。続いて基調講演を行ったジョージ・W・ブッシュ研究所のマシュー・ルーニー所長は、テキサス州は北米自由貿易協定(NAFTA)の大きな恩恵を受け、またグローバリゼーションが米国の産業構造を変化させてきた中で、保護主義的な措置は解決策ではなく、自由貿易が米国の雇用にメリットがあることを説明していくことが重要と述べた。
パネルディスカッションでは、太田泰彦日本経済新聞論説委員は、アジア・中国を例に、「今日の世界貿易政策を語る上でデータの重要性は非常に大きく、またイノベーションのスピードは非常に速い現在にあって、米国抜きでルール作りは進めない」との見解を示した。
アピラディ・タントラポーン元タイ商業相は、高いレベルの経済連携協定が重要であること、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)が締結されれば世界で最も大きな貿易協定となることを指摘した。また「APECの貿易促進はWTOが果たした成功事例であり、タイも環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)に関心があり(2018年5月7日記事参照)、米国がTPPに戻ることを期待する」と述べた。
ワン・ヤン北京大学教授は、「グローバルサプライチェーンが進んでおり、対米貿易赤字は過大に算出されている、またアジアの成長には米国の協力、貢献が必要であり、米国、中国、日本、東南アジアが協力して、開かれた平和的な経済を目指して一緒に取り組むべき」と述べた。
ウェンディ・カトラー元米国通商代表部(USTR)代表補は、米中貿易戦争の現状を解説するともに、米国と日本が他のアジア太平洋諸国と協力してインダストリー4.0に対応する新しい貿易システムを作り上げていくことを願っていること、またインフラストラクチャー、エネルギーの分野に関し日米は当然のパートナーであり協力してくことができると述べた。
(平井利長)
(米国、日本)
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