進む通貨安、輸入代替策で対抗

(インドネシア)

ジャカルタ発

2018年09月06日

トルコ・リラ、アルゼンチン・ペソの急落など新興国で進む通貨安への警戒感が強まっている。ペソ急落翌日の8月31日、インドネシアの通貨ルピアは2018年の最安値を更新し、1ドル=1万4,711ルピアを記録した。年初からの下落幅は8.27%となった。7月末の外貨準備高は1,183億ドルで輸入の6カ月分を上回り、適正水準にあると言われるものの、ルピアの対ドルレートが20年前のアジア通貨危機時の水準に近づいていることから、国内報道には危機感が見え隠れする。こうした状況下、政府は金融政策のみならず、輸入品を積極的に国産品で代替する貿易政策を導入する姿勢を見せている。

インドネシア中央銀行は従来、緩やかな通貨安を容認してきたが、1ドル=1万4,000ルピアの水準を越えた5月から積極的な金融引き締め政策に移行している。5月から段階的に4度の利上げを行い、政策金利を5.5%とするとともに市場介入も実施している。しかし、こうした金融政策にもかかわらず、通貨の下落傾向は止まっていない。

貿易赤字が拡大、政府は外貨流出防止策

国内では金融政策の効果が上がらない背景として、年初から拡大する貿易赤字が注目されている。石油の純輸入国であるインドネシアでは、資源価格の上昇と通貨安が重なったことで、7月には約20億ドルの貿易赤字となるなど、赤字額が増大傾向にある。外貨流出を防ぐべく、政府は9月1日から国内の鉄道、船舶などを対象に、バイオ燃料が20%まで混合されたガソリンの使用を義務付けた。ガソリンに国産のパーム油から製造したバイオ燃料を混合することで、輸入ガソリンの使用量を削減する狙いがある。ダルミン・ナスチオン経済担当調整相が地元紙に述べたところでは、この政策により年末までに約20億ドルの輸入削減効果があるという。

さらに、国内品で代替可能な輸入品については、非関税障壁を引き上げる動きもある。財務省は8月20日、輸入品500品目を対象として、輸入時に前払いする法人税を2.5%から7.5%に引き上げる考えを示した。これについては、企業活動に影響する可能性があるとして、インドネシア商工会議所(KADIN)や経営者協会(APINDO)からも懸念が示されている。報道によると中間財や原材料は対象外となる見込みだが、日系企業の生産活動に影響を及ぼさないかどうか注視が必要だ。

(山城武伸)

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