トランプ政権、自動車燃費基準の緩和案を発表

(米国)

ニューヨーク発

2018年08月10日

トランプ政権の環境保護庁(EPA)と運輸省道路交通安全局(NHTSA)は8月2日、乗用車と小型トラックの温室効果ガス(GHG)排出基準と、基準達成手段となる企業平均燃費(CAFE:Corporate Average Fuel Economy Standard)規制に関し、2012年にオバマ政権下で決定された現行の基準値を緩和するための新たな規制案を発表した。EPAとNHTSAは公示後60日間、パブリックコメントを受け付けるとともに、ワシントン、デトロイト、ロサンゼルスで公聴会を開催する(日程は未定)。

2021~2026年型車の基準値を2020年型車の目標に据え置き

現行基準では、2025年型車まで1ガロン当たりの走行距離が約50マイル(リッター換算21.1キロ)以上となるよう、年ごとに燃費改善目標を段階的に定めている。これに対し、今回の法案(SAFE車両規則PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)、注1)では、2021~2026年型車の基準値を、2020型車の目標値である37マイル(リッター換算15.6キロ)に据え置く。

NHTSAは、燃費改善にかかるコストの低減などによって、新車価格が2,340ドル下がり、国内販売台数は2029年まで合計100万台増加するとともに、車両が新しいほど安全性が増すとし、2029年までで年間1,000人分の死亡件数を減らせると試算した。他方、大気中の二酸化炭素は2100年までに0.08%増え、また気温は0.003度上昇するとみているものの、環境への影響は限定的だと評価した。

今回の新規制案には、州が独自に定める燃費基準やゼロ・エミッション車(ZEV)規制(注2)の廃止も盛り込まれた。カリフォルニア州は2013年に大気浄化法(Clean Air Act)209条の適用除外を受けて、連邦より厳しい燃費規制を実施している。また、カリフォルニア州の排ガス基準の準用が認められている13州とワシントンD.C.においては、2022年以降の自動車燃費基準を現行CAFE基準値と同水準とすることを決定済みだが、これらの州などに対しても新燃費基準を適用させる意図とみられる。カリフォルニア州などは同政府案を阻止するために提訴する意向を表明している。

自動車団体の米国自動車工業会(AAM)とグローバル・オートメーカーズは共同で、「メーカーは、価格、安全性、雇用、環境のバランスを取りつつ、引き続き燃費改善による最先端技術の開発を行っていく。連邦政府とカリフォルニア州で、共通した良識ある解決策を見いだすよう強く求める」との声明を発表し、内容が異なる複数の規制によるコスト増を避けたい考えを示した。

(注1)SAFE車両規則は、Safer Affordable Fuel-Efficient Vehicles Rule for Model Years 2021-2026 Passenger Cars and Light Trucksの略称。

(注2)州内で一定台数以上の車を販売する事業者に対して、販売台数の一定比率を電気自動車(EV)など温暖化ガスを排出しない車両にすることを義務付ける規制。カリフォルニア州をはじめ10州が導入している。

(大原典子)

(米国)

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