英政府、ブレグジットをめぐり外交攻勢

(英国)

ロンドン発

2018年08月08日

英国議会が休会した7月24日前後から、EU離脱(ブレグジット)をめぐり、テレーザ・メイ首相や閣僚らが外交攻勢をかけている。メイ首相は7月27~28日にチェコ、オーストリア、エストニアの各首相と会談し、先に発表したEUとの将来関係に関する白書(2018年7月13日記事参照)について理解を求めた。

これに先立つ7月23日には、ジェレミー・ハント外相がドイツを訪問し、ハイコ・マース外相と会談。ハント外相は「合意なき離脱(ノー・ディール)に陥ることを防ぐには、EU側が交渉で一層の柔軟性と創造性を発揮すべきだ」と述べ、EU側の姿勢に変化を促した。ドイツでは7月上旬の英独首脳会談以降、アンゲラ・メルケル首相が対英交渉に軟化の姿勢を示しているとの報道もあり、英国としては、大国ドイツの影響力を利用してEUとの交渉を軌道に乗せたいところだ。

欧州以外でも、白書に沿った通商政策を積極的に売り込んでいる。ハント外相は7月30日に中国を訪問。王毅外相から、ブレグジット後の英国との自由貿易協定(FTA)について協議する用意があるとの発言を引き出した。リアム・フォックス国際貿易相も7月31日と8月1日、日本で安倍晋三首相や茂木敏充経済再生担当相と会談し、米国を除く11カ国による包括的および先進的な環太平洋パートナーシップ協定(CPTPP、いわゆるTPP11)への早期加盟の意向を表明した。

しかし、ブレグジット交渉の行方は楽観視できない。7月末から夏休みに入ったメイ首相は8月3日、同じく休暇中のフランスのエマニュエル・マクロン大統領と同国南部で非公式に約2時間にわたり会談。内容は明らかにされていないが、マクロン大統領は欧州委員会のミシェル・バルニエ首席交渉官の頭越しに交渉に介入することはしないと明言、会談後の記者会見も行われなかった。

フランスはブレグジットについて最も強硬な国の1つで、特にロンドンの金融都市としての機能をパリに取り込むことに熱心だといわれる。7月下旬から8月にかけても、グレッグ・クラーク・ビジネス・エネルギー・産業戦略相、フィリップ・ハモンド財務相、ハント外相、ドミニク・ラーブEU離脱担当相らが相次いでフランスを訪問し、英国の方針への支持を訴えてきたが、英国にとって望ましい変化は聞こえてこない。

(宮崎拓)

(英国)

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