首脳会談でエチオピアのダム建設の最終合意を目指す
(エジプト、エチオピア)
カイロ発
2018年06月15日
エチオピアで計画されている約40億ドルの水力発電プロジェクトであるグランドルネッサンスダムの建設については、2015年3月に周辺国のスーダン、エジプトとの3カ国暫定合意がなされたものの、エジプトとスーダンによる水資源の安定確保の主張により協議が難航し、長期化していた。6月10日に、エチオピアのアビィ・アハメド首相とエジプトのアブドゥルファッターハ・エルシーシ大統領がカイロで会談し、記者会見を開いた。
両首脳は、ダム建設によりエジプトの水利が侵害されることはなく、近い将来の最終合意を目指すと述べた。エルシーシ大統領はまた、スーダンを含む3カ国による共同投資基金の重要性に言及し、3カ国のインフラ開発を進める考えを強調した。
グランドルネッサンスダムの建設は、ナイル川を主な水源とするエジプトにとって非常に深刻な問題で、国内への水供給に悪影響を及ぼすとの懸念が強かったが、今回の首脳会談でエチオピア側が水利の安定的確保を約束したことで、前進に向けて環境整備した。アビィ首相は、ナイル川がエジプトの工業と農業の発展や飲料水確保の源であること、ダム問題の解決がエルシーシ政権の優先事項であることに理解を示した。
エルシーシ大統領はかねて、ダム建設はエチオピアのみならず国際世論とともに歩むべきと主張しており、第2期政権がスタートして間もない中、大きな成果と評される好材料となる。さらに大統領は首脳会談で、エチオピアに投資するエジプト企業が増加していることにも言及し、エチオピアでのエジプト企業用工業団地の設立や漁業分野などの協力についても協議した。
長らく懸念事項だったダムをめぐっては、2017年11月の閣僚級会合では、スーダンとエジプトへ流れる水量などにどのような影響を与えるかについて、コンサルタントが作成した着工報告書にスーダンとエチオピアは合意せず、これを機に交渉が停止していた。その後2018年5月の会合では、各国の専門家から成る調査委員会が技術面などでの懸念事項を着工報告書にどう反映するかを協議していくこと、さらに半年に1回、3カ国首脳会談を開催することが確認された。着工報告書の合意に向け、引き続き今後の動きについて注視する必要がある。
(常味高志)
(エジプト、エチオピア)
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