欧州鉄鋼連盟、EUのセーフガード調査開始を評価-産業の浮沈を決める重大局面との認識示す-

(EU、米国)

ブリュッセル発

2018年03月28日

欧州鉄鋼連盟(EUROFER)は3月27日、欧州委員会の緊急輸入制限(セーフガード)調査開始を歓迎する声明を発表した。米国政府の鉄鋼に対する追加関税賦課決定を踏まえ、欧州委は鉄鋼26品目を対象に調査を行い、9カ月以内に結論を出す方針だが、状況によっては調査結果を待たず、セーフガード措置を発動する可能性があることに言及している。欧州鉄鋼産業界は、米国市場から締め出された鉄鋼の流入を懸念しており、特に輸出数量制限で米国と合意した韓国を名指しし、EUへの鋼流入につながると警戒感を募らせている。

鉄鋼26品目を対象にセーフガード調査

欧州委員会は3月26日に、鉄鋼製品に関する緊急輸入制限(セーフガード)調査を開始すると発表。これを受け、欧州鉄鋼連盟(EUROFER)は27日、歓迎するとの声明を出した。欧州委は米国政府の鉄鋼・アルミニウムに対する追加関税賦課決定に対する措置の1つとして、セーフガード調査を開始する方針を示していた。欧州委は全ての原産地の鉄鋼製品26品目を対象とするセーフガード調査を実施し、9カ月以内に結論を出すとしているが、状況によっては、調査結果を待たずにセーフガード措置を発動する可能性があることについても言及した。

欧州委によれば、2016年3月から実施している調査では、特定の鉄鋼製品のEUでの輸入増加が確認されており、この傾向が米国の追加関税賦課決定によりさらに強まり、米国市場から締め出された鉄鋼製品の欧州市場への流入を引き起こし、EUの鉄鋼市況をゆがめる恐れがあるとみている。調査の結果、欧州委がEU域内の産業を守るために必要と判断すれば、追加関税賦課や輸入数量制限などの緊急措置を発動することになる。ただし、欧州委としては、これらのセーフガード措置はあくまでWTOの枠組みで認められたものと認識しているという。

広範な措置発動を求める鉄鋼業界

EUROFERは声明で、欧州委のセーフガード調査が鉄鋼26品目に及んだことについて、「相対的に広範」な調査との認識を示したが、米国の追加関税賦課決定に伴い、余剰鉄鋼がEU市場に流入する事態に警戒感を強めている。アクセル・エガート会長は「調査は迅速に実施されねばならず、その結果を踏まえたセーフガード措置は、不当な鉄鋼流入に伴うEU域内産業への被害を食い止めるため、できる限り広範な品目で発動すべきだ」と語り、EU法とWTOルールの範囲内で迅速かつ適切な対抗策を欧州委に求めた。

他方、世界的な余剰鉄鋼のEUへの流入問題について、EUROFERは韓国を名指しし、「例えば、韓国のように米国への輸出数量制限に応じる国が出始めている。これらが潜在的な余剰鉄鋼につながる」「韓国は米国との合意で、米国向け鉄鋼輸出を年間270万トン(2015~2017年輸出実績平均の70%相当)に制限するようだが、この結果、残りの30%がEU市場に向かってくる懸念がある」との認識を示した。また、エガート会長は「2018年1~2月のEUの鉄鋼(鋼管・パイプなど除く鉄鋼完成品)輸入は前年(同期)比12%増加し、過去最高を記録した2017年の鉄鋼輸入の勢いを上回る」と指摘。「EUなどが米国の追加関税賦課の暫定適用除外になったからといって、EUが何ら準備をしなくてよいことにはならない」と厳しい現状認識を示し、セーフガード措置が適切に発動されるか否かが、EUの鉄鋼産業が「市況回復を持続できるか、鉄鋼危機の暗黒時代に戻るかを決める」と、セーフガード措置の重要性を訴えた。

(前田篤穂)

(EU、米国)

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