欧州農業・食品・飲料3団体、EU・英国通商協定を求める-ハードブレグジット回避に向けて声明-

(EU、英国)

ブリュッセル発

2017年11月20日

欧州最大の農業協同組合・農業生産者団体COPA-COGECA、欧州農産品貿易連絡委員会(CELCAA)およびフード・ドリンク・ヨーロッパの3団体は11月16日、英国のEU離脱(ブレグジット)に伴う農業・食品・飲料産業のビジネス環境の激変緩和を念頭に、EU・英国間の通商協定を求める声明を発表した。3団体は「地理的表示(GI)保護」「食品安全のための相互認証」「衛生植物検疫措置(SPS)」などを含めた包括的通商協定がEU・英国間に必要としているが、その発効までに現状維持を保証する移行期間の設定も求めた。

「クリフエッジ」回避のための通商協定が必要

欧州最大の農業協同組合・農業生産者団体COPA-COGECA、欧州の食品流通事業者で構成される欧州農産品貿易連絡委員会(CELCAA)、欧州の飲料事業者の産業団体フード・ドリンク・ヨーロッパの3団体は11月16日、ブレグジットに伴う欧州の農業・食品・飲料関連事業者を取り巻くビジネス環境の激変を緩和するため、EU・英国間の通商協定を求める声明を発表した。EUと英国は、6回目となるブレグジット交渉会合を11月10日に終えたところだが、英国の財政問題解決(清算)の見通しが立たず、通商協定の交渉に至っていない(2017年11月13日記事参照)。

今回の声明によると、農産品・食品・飲料はEU27カ国と英国の貿易全体の約11%を担い、相互に依存関係が深いという。このため、ブレグジット問題に伴う先行き不透明感が顕著で、同業界に与える打撃を最大限緩和するための対策が喫緊の課題になっていると指摘している。具体的には、(1)英国のEU離脱直後に(WTOベースの)関税や通関措置が完全復活する「崖っぷち(クリフエッジ)」シナリオを回避すべきこと、(2)究極的にはEU・英国間の包括的な通商協定が必要であること、(3)原産地認定に援用される規則を早期に明確化すべきこと、の3点を求めている。

農産品・食品固有の事情への配慮も強調

3団体は、(1)の「クリフエッジ」回避については、EU・英国間の貿易条件の現状維持を保証する移行期間の設定を想定しており、少なくとも新たな通商協定が発効するまでは現在と同じ条件で貿易が行われるべきとの考えを示した。英国のEUからの離脱が想定されている2019年3月30日午前0時(ブリュッセル時間)と同時に、激変に直面する事態だけは回避したいとの意向を、欧州の農産品・食品・飲料産業として明確に打ち出している。

(2)の通商協定については、農産品・食品に対して高い税率が課される可能性のある関税や煩雑となる通関措置を回避するためには、EU・英国間の包括的な自由貿易協定(FTA)が不可欠と強調した。具体的には、「通関手続きの簡素化」「原産地規則」「地理的表示(GI)保護」「食品安全のための相互認証」「衛生植物検疫措置(SPS)」などの条項を含む包括的な通商協定を求めるとしている。

また、通関措置が復活した場合、通関手続きに伴う渋滞発生など、双方の交通面の問題も無視できないとしている。これまでなかった通関手続きや交通渋滞の影響で、一部の農産品・食品が品質を保てず、廃棄せざるを得ない事態も起こり得るとしている。特に、農産品・食品の流通で相互依存関係にある北アイルランドとアイルランドについては、より現実的で建設的な対応が求められると指摘している。

このほか、英国がEUを離脱した場合、EUが域外国からの農産品・食品に関して実施している検疫措置などの検査コストなどの負担が、生産者や消費者に課されるリスクもあるとしている。

(前田篤穂)

(EU、英国)

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