欧州委、英国とのブレグジット初回交渉を評価-今後は1週間程度の交渉会合を毎月開催-
(EU、英国)
ブリュッセル発
2017年06月20日
欧州委員会のミシェル・バルニエ首席交渉官は6月19日、英国のEU離脱(ブレグジット)をめぐる英国政府との初回交渉で「今後の日程」「交渉実務の体制」「交渉の優先順位」について合意できたことを評価すると交渉会合後の記者会見で表明した。また、今後は1週間程度の交渉会合を毎月行うことも明らかにした。ただ、欧州議会とともに、英国がEUに対して負う債務の履行については妥協しない姿勢を示している。
3部会を立ち上げ、部会単位で交渉会合
欧州委のバルニエ首席交渉官は6月19日、英国政府のデービッド・デービスEU離脱相との初回交渉を終え、共同記者会見で、「正しい方向に(交渉を)開始するのに有用なものとなった」と総括した。また、「今後の日程」「交渉実務の体制」「交渉の優先順位」について合意できたことも評価した。今後の実務日程としては「1週間程度の交渉会合を毎月行う」ことで合意した。
バルニエ首席交渉官はその上で、第1段階として、「われわれはブレグジットに伴う、先行きの不透明感を払拭(ふっしょく)しなければならない」「ブレグジットを秩序あるかたちで進める必要がある」と強調した。今後の交渉作業については、双方市民の権利、財政問題、その他諸問題の3部会を立ち上げ、部会単位で交渉会合を行うと語った。EU・英国双方の作業部会は議論の結果を踏まえ、交渉会合の期間中に双方の交渉責任者であるバルニエ首席交渉官とデービスEU離脱相に報告し、それを受けて両氏が協議を行い、困難な問題を解決するとしている。
北アイルランド国境問題についての政策対話でも合意
交渉の優先課題である、双方市民の権利、財政問題、国境問題(特にアイルランド)の3点について、バルニエ首席交渉官は「タイミングが重要」「できる限り早く基本合意すべき」との認識で合意したと述べた。英国がEU側に対して負うべきとEUが主張する債務の履行について、これまでの厳しい姿勢で臨む意思を明確にした。また、アイルランドと北アイルランドとの国境問題については「喫緊の課題」との認識を示し、1998年4月に北アイルランド問題の和平プロセスに道筋をつけた「ベルファスト合意(聖金曜日協定)」の順守や、「共通旅行区域(CTA)」の維持に優先的に取り組むべきと指摘し、北アイルランド国境問題についての政策対話を進めることで合意したとも語った。
通商交渉など将来のEU・英国の関係については、「交渉ガイドライン」(2017年5月1日記事参照)から一貫してEU側が主張しているとおり、離脱に関わる協議に「十分な進捗」がみられたと判断した後に、「第2段階」として協議するとの基本方針を繰り返した。そして最後に、バルニエ首席交渉官は「合意なしよりもはるかに良い、公平な合意はあり得る(a fair deal is possible and far better than no deal)」との楽観的な見通しも示し、英国に対する「敵意はない」とも述べ、「いつでも欧州議会の協力も得られるように取り組む」とした。
欧州議会も英国の債務履行などが離脱協定承認の前提と指摘
欧州議会のアントニオ・タヤーニ議長と、同議会でブレグジット問題の調整責任者であるギー・フェルホフスタット議員は6月19日付で声明を出し、EU側が最も重視するEUおよび英国双方市民の権利保護の問題の重要性を強調した。タヤーニ議長は「ブレグジットの影響にさらされる数百万のEU市民の権利を守り、北アイルランド問題をめぐる『ベルファスト合意』を順守し、英国政府が同意した債務を履行することの3点は不可欠で、欧州議会が英国との離脱協定を承認する前提となる」との認識を明らかにした。他方、フェルホフスタット議員は「既にタイトになりつつある交渉日程について、双方の理解が得られたことは評価できる」と指摘した。
なお、欧州議会は、英国がEUと結ぶ「離脱協定」には同議会の承認が必要であることを強調している。
(前田篤穂)
(EU、英国)
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