ITC、NAFTA再交渉に伴う関税撤廃の影響を調査-6月20日に公聴会を開催-
(米国)
ニューヨーク発
2017年05月29日
米国際貿易委員会(ITC)は5月26日、北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉に伴う米国の関税撤廃の影響調査を開始すると発表した。調査は、ロバート・ライトハイザー通商代表部(USTR)代表が1974年通商法と2015年大統領貿易促進権限(TPA)法に基づき要請していたもので、結果は、公聴会やパブリックコメントを経て8月16日までにUSTRに提出されるが、内容は「機密情報」扱いとなる見込みだ。
関税課税品目全てが対象に
ITCは5月26日、NAFTA再交渉による米国側の関税撤廃の影響調査を開始すると発表した。カナダとメキシコからの輸入品に課している関税を撤廃した場合の国内経済や産業、消費者への影響を調査してUSTRに報告する。
同調査は、NAFTA再交渉の議会通知が行われた5月18日に、ライトハイザー通商代表がITCのロンダ・シュミッドトレイン委員長宛てに書簡で要請したもので、1974年通商法131条と2015年TPA法105条に基づく。
1974年通商法131条は、貿易協定の締結による関税変更で生じ得る経済的な影響(probable economic effect)について、「随時」ITCに調査を命じることを大統領に義務付けている(注)。ライトハイザー通商代表は、大統領から委任された権限に基づき、カナダとメキシコからの輸入品の関税撤廃の影響を調査するようITCに要請した。
2015年TPA法105条は、農産品を対象とした通商交渉を行う場合には、議会との協議を行うことを通商代表に義務付けている。また通商代表は、農産品の輸入センシティブ品目を特定した上で、当該品目に対する関税撤廃が米国の国内産業や経済に及ぼす影響に関してITCに調査を命じることが求められている。本調査の実施後に、通商代表は関税削減を行う品目を、その理由とともに議会の関連委員会に通知しなければならない。
ライトハイザー通商代表の書簡では、砂糖(砂糖を使った一部のシロップやチョコレートなども含む)、酪農品(牛乳、クリーム、ヨーグルト、バター、チーズなど)、野菜、かんきつ類、たばこ、肉(牛肉、羊肉など)、ウールや綿花など385品目(米国関税分類8桁ベース)が輸入センシティブ品目として示されている(通商専門誌「インサイドUSトレード」5月19日)。しかし通商代表は、センシティブ品目のほか、NAFTAにおいて関税が維持されている全ての農産品に対する調査を要請しており、ITCもこれに基づいて調査を実施することになる。
6月26日までパブリックコメントを募集
ITCの調査は以下のスケジュールで行われ、公聴会は6月20日に開催される。また、6月26日までパブリックコメントを募集する。
6月7日:公聴会参加のための申請期限
6月13日:公聴会前の情報提供・声明提出の期限
6月20日:公聴会
6月26日:公聴会後の情報提供・声明提出の期限
6月26日:全ての書面提出の期限
8月16日:USTRに報告書提出
なお、ライトハイザー通商代表は、大統領令13526(2009年12月29日付)に基づいて、調査結果を10年間は機密情報扱いとするようITCに要請している。
(注)条文では、「大統領は調査を望む品目を随時ITCに提示しなければならない(President shall from time to time publish and furnish the ITC with lists)」とされている。2015年TPA法105条には農産品調査で「随時」との文言はなく、より強い義務となっている。
(鈴木敦)
(米国)
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