通関所要時間が改善するも原産地証明の利用に課題-インドネシアの通関事情(1)-

(インドネシア)

ジャカルタ発

2017年04月12日

 インドネシアは、通関手続きが煩雑で時間がかかるといわれている。しかし、ジェトロの日系企業調査によると、2016年は通関手続きを煩雑と見なす日系企業の割合は大きく減少した。インドネシア政府の取り組みにより、通関所要時間に改善がみられる。他方で、輸入時の関税分類番号が突然変更されることや特恵関税を利用する場合の原産地証明書が否認されがちなことなど課題も残る。最近の通関事情などについて3回に分けて報告する。

通関手続きを煩雑と感じる企業割合は減少

従来、インドネシアで輸入通関を行う際の課題として、入港から通関終了までの手続きにおける滞留時間が長いこと、税関職員の見解で輸入時の関税分類番号が突然変更されること、輸入通関後に税関が実施する税務調査により高額の追徴税が課されることなどが企業から多く指摘される。ジェトロが毎年実施している「アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」でも、通関などの諸手続きが煩雑だと感じている日系企業の割合は、2013年63.0%、2014年62.7%、2015年58.7%と、徐々に低下してきているものの、経営上の主な問題点となっていた。

しかし、2016年調査では48.8%と前年より約10ポイント減少した。改善した要因として、2014年からのインドネシア政府による輸入時の滞留時間短縮の取り組みが挙げられる。インドネシア最大のタンジュンプリオク港の通関所要時間は、2014年9月には平均5.5日かかっており、平均1~3日で通関できるシンガポールやマレーシア、タイに比べて所要時間の長さが問題となっていた。こうした事態を懸念したジョコ・ウィドド大統領は、自らのイニシアチブで改善に向けた取り組みを進め、2017年3月時点の通関所要時間は平均3.05日まで短縮されたという。

検査なしのグリーラインの比率が上昇

インドネシアでは、通関の際に検査なしで通関手続きが行われる「グリーンライン」、書類審査が必要な「イエローライン」、輸入品を取り出して確認する開披検査が必要な「レッドライン」の3審査区分で通関検査が行われる。なお、グリーンラインよりもさらに優先度の高いMITA(注)ラインも一部企業には適用されている。一般的には、輸入者が初めて輸入する際は原則レッドラインからで、輸入実績を積むことによりイエローライン、グリーンラインへと順に格上げされていく。タンジュンプリオク港における通関審査区分ごとの所要日数は表のとおり。

政府は近年、グリーンラインの割合を増やす傾向にあるようだ。ジェトロが複数の輸入関連企業にヒアリングしたところ、グリーンラインに割り振られる比率が高まり、2016年は通関所要時間の短縮が顕著だったとする企業が多かった。日系商社では、2016年12月時点での通関所要時間は平均2.7日だったという。さらに、レッドラインからイエローライン、グリーンラインへと移行するペースも速くなったと話す通関業者もあった。同社によると、早いケースでは数ヵ月でグリーンラインに移行する事例が出ている。輸入通関時の税関における所要時間は全般的に改善されてきたといえる。

タンジュンプリオク港における通関審査区分ごとの所要日数
審査区分 内容 通関所要日数
レッドライン 開披検査 4.9日
イエローライン 書類審査 2.5日
グリーンライン 検査なし 0.07日
MITAライン 検査なし 0.06日

(出所)インドネシア財務省資料(2016年12月)を基に作成

積み替え時の非加工証明書が問題点

しかし、通関全般を見渡すと課題は依然として多い。日系企業の抱える問題の1つが、経済連携協定(EPA)や自由貿易協定(FTA)などの特恵関税を利用する場合の原産地証明書の否認が頻発していることだ。原産地証明書はそれぞれの協定に基づき輸入国税関が確認するが、特にインドネシアでは、原産地証明書への記載内容がインボイス(送り状)と完全に一致しない場合、否認するといった厳しい運用がみられる。また原産地から出航して、第三国で積み替えてインドネシアに入港する場合も、特別な注意が必要だ。原産地証明には協定ごとに物品自体の基準に加えて、積送における基準があり、途中で開梱(かいこん)作業を行うと原産地資格を失う要因となり得る。インドネシアでは特に厳しい運用がされており、開梱しない場合でも第三国の港での積み替えを伴う場合に、積み替え地における当局発行の非加工証明書が要求されるケースがある。こうした非加工証明書の発行手続きは積み替え地ごとに異なる上、手続きも煩雑だ。比較的発行が容易なのはシンガポールだが、それ以外の積み替え地では発行自体がされないことも多い。非加工証明書がない場合、インドネシア税関で原産地証明書を否認する事例が多数報告されている。

また、貨物の通関で税関職員がこれまでの通関実績と異なる関税分類の判断をして、追加的な税を徴収されることも問題となっている。

(注)MITA:税関が優良輸入者に対して認定する輸入者資格。輸入通関の短縮や関税の一括納税などの特典がある。

(山城武伸)

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