EU、ベトナムとのFTAに最終合意
(EU、ベトナム)
ブリュッセル事務所
2015年12月10日
欧州委員会は12月2日、ベトナムとの自由貿易協定(FTA)について全ての協議を終了し、最終合意に達したと発表した。同FTAは8月4日に大筋合意に達し、約4ヵ月で最終調整を終えた。欧州委は、今回の合意がASEANとの地域間FTAに向けた重要な一歩になるとの見解も明らかにした。
<ASEANとの地域間FTAに向けた一歩>
欧州委は12月2日の発表で、協定調印に臨んだセシリア・マルムストロム委員(通商担当)の発言を引用し、「交渉の終結はEU・ベトナム双方にとって朗報だ。ベトナムは9,000万を超える消費人口を抱えた活気ある市場で、中所得層の成長や若い労働力も潤沢だ」「このFTAは(今後、EUが進める)途上国との通商政策にとって新たなモデルとなる」との認識を示した。同FTAを通じて、ベトナムにおける労働者の権利尊重、天然資源の持続可能な管理にも貢献するとしており、最終的には、ASEANとの地域間FTAに向けた重要な一歩になると評価している。
EUとベトナムは、2012年6月にFTA交渉を開始。2015年8月には大筋合意(2015年8月11日記事参照)に達していた。しかし、その後起こった大きな地殻変動が10月の環太平洋パートナシップ(TPP)の大筋合意だ。実態的にEUは、世界経済の大動脈の枠外に置かれる格好となり、TPP締約国と個別のFTAを積み上げる必要に迫られている。そうした意味で、今回のベトナムとのFTAは、アジアにおけるEUの存在感を示す重要な意味を持つといえそうだ。
<EU側では流通業が大きな期待>
EU側では消費財の流通業で同FTAに対する期待が根強くあり、英国の流通大手マークス&スペンサー(アパレル関連でベトナムから調達)は、同FTAの大筋合意の翌日(8月5日)に支持を表明したほどだ。他方、ベトナムに対して、EU原産品に関する地理的表示の保護や酒類販売に係る許認可制度の撤廃を求めるワイン・蒸留酒(スピリッツ)産業や、原産地認定基準の運用を厳格にするよう求めるアパレル産業からは、慎重な交渉を要望する声も上がっていた。
今後、最終合意した協定案について、法的整合性の確認やEUの公用言語とベトナム語への翻訳作業が必要だ。欧州委は、EU理事会(閣僚理事会)での採択を経て欧州議会で批准することになる。
(前田篤穂)
(EU、ベトナム)
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