欧州自動車工業会、重要な原材料に関する法案への提言を発表

(EU)

ブリュッセル発

2023年03月09日

欧州自動車工業会(ACEA)は3月7日、欧州委員会が3月14日に発表予定の、EUの重要な原材料に関する法案に対する政策提言書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

ACEAは、運輸部門の脱炭素化にはEモビリティが推進力となるが、EUはバッテリーやトラクションモーター生産に必要となる原材料供給をEU域外国に大きく依存し、サプライチェーンの混乱やそれに伴う価格の変動に対して脆弱(ぜいじゃく)だと指摘。ACEAは、(1)バッテリー生産に必要なリチウム、ニッケル、マンガン、コバルト、天然黒鉛、(2)燃料電池にも必要な水素の生産に使われるイリジウム、プラチナ、タンタル、コバルト、ニッケル、(3)トラクションモーターの永久磁石の生産に必要なジスプロシウムやネオジムといったレアアースを、自動車産業の脱炭素化で特に重要な原材料として挙げた。そして、(1)資源の採掘などに関連する事業への投資支援となる環境整備、(2)戦略的自律性の強化といった産業政策を遂行することで域内生産を促進、(3)域外の供給の多元化、(4)二次原材料の確保強化に向けた循環型経済への移行などを原則として、重要な原材料について政策立案することを、欧州委に対して求めた。

ACEAは供給の多元化に関連して、南米諸国やオーストラリアといった資源大国とは、貿易協定(FTA)締結プロセスや交渉を加速化させる(2023年1月13日記事参照)だけでなく、FTAの枠を超えた研究開発や採掘など原材料分野での協力深化を目指す戦略的パートナーシップを確立することなどが必要だとした。また、循環型経済については、例えばEUの新たなバッテリー規則(2022年12月13日記事参照)におけるリサイクル済み原材料使用の目標値の設定など、現在の市況に即していない取り組みもみられると指摘。リサイクル部門への支援強化や高品質なリサイクル済み原材料の確保につながる技術などへの投資促進、さらに自動車業界も含めた産業界の需要動向を踏まえながら、リサイクルされたものも含め、原材料の利用可能性を監視することなどが必要だと述べた。

そして、(1)EUの「重要な原材料一覧」(2020年9月4日記事添付資料参照)を産業部門ごとのニーズや緊急性に合わせたものに改定するほか、バッテリー生産に必要な原材料については定期的に評価し見直す、(2)戦略的な原材料や循環型経済に特化した専門機関の設立などを検討、(3)備蓄については、産業界の自主的な備蓄を支援するにとどめる、などを提言した。

「2035年以降の全新車ゼロエミッション化」正式採択に足踏み

ACEAが自動車業界にとって重要な原材料の安定供給が急務と捉える背景には、欧州自動車市場で急速に進む電動化がある。その原動力の1つが、2035年以降、実質的に全ての新車をゼロエミッション車とする乗用車・小型商用車(バン)二酸化炭素(CO2)排出基準に関する規則の改正案だ。同法案は発効に向けて、欧州議会が2023年2月、正式に採択し(2023年2月16日記事参照)、EU理事会(閣僚理事会)による正式採択を待つ段階にある。しかし、現地報道によると、ドイツやイタリアなどが反対する姿勢を示し、採択が当初の予定から延期されている。合成燃料(e-fuel)の扱いなどが焦点になっているとみられ、今後の動きが注目される。

(滝澤祥子)

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