米FRB、テーパリング終了を2022年3月末に前倒し決定、利上げは2022年に3回見込む

(米国)

ニューヨーク発

2021年12月17日

米国連邦準備制度理事会(FRB)は12月14、15日に連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標0.00~0.25%の現状維持を決定した(添付資料図参照)。一方で、米国債を月800億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)を月400億ドル購入してきた量的緩和策について、前回11月会合で毎月150億ドルずつ(米国債100億ドル、MBS50億ドル)の減額(テーパリング)に決定・開始したが(2021年11月5日記事参照)、2022年1月から倍の毎月300億ドル(米国債200億ドル、MBS100億ドル)とすることを決定した。これにより、2022年6月に予定していたテーパリングの終了予定が2022年3月に前倒しされる。今回の決定も前回同様に、11人の委員の全会一致だった。

FOMCは前回の声明文で最近の物価上昇を「一時的」としていた表現を「一時的と予想される」に修正したが(2021年11月5日記事参照)、インフレの長期化から今回の声明文では「一時的」という記述自体を削除した。加えて、「インフレ率はこのところ(物価目標の)2%を上回っているが、労働市場が雇用最大と判断される水準に達するまでは、この(FF金利の)目標レンジを維持することが適切と見込む」と記述した。また、「雇用増加はこの数カ月堅調であり、失業率は大きく下がった」と回復に自信を示したが、「新型コロナウイルスの新たな変異株によるリスクを含め、先行きリスクが残っている」として、一部慎重さを見せた。

今回の会合では、地区連銀総裁らを含めたFOMC参加者18人による中長期の見通しも示したが、最近の新型コロナウイルス感染拡大や新たなオミクロン型変異株発生などを背景に、2021年の実質GDP成長率の予測中央値は5.5%と、前回9月の5.9%から下方改定された。また、2021年のインフレ率(コアPCE)の予測中央値は4.4%(前回9月3.7%)、2022年も2.7%(前回9月2.3%)として、長引く物価高止まりから上方改定された(添付資料表参照)。他方、FF金利の引上げ時期について、前回は2022年の利上げを見込まない参加者が半数を占めたが、今回は全参加者が利上げを見込み、かつ、2022年末までに3回の利上げを見込む参加者が10人と過半を占めた。

ジェローム・パウエルFRB議長は会合後の記者会見で「インフレが加速し、雇用が急速に回復する、これ以上の政策支援は必要ない」と明言した。オミクロン株の影響については「人々はこれまでの経験で新型コロナとの共存を学びつつある」と楽観的な見通しを示す一方で、「高水準のインフレが広範囲かつ長期間続いていることから、テーパリングの加速が必要と判断した」と述べ、インフレ対応の優先度が高いという認識を示した。今後の利上げについては「資産購入(量的緩和)を続けながら利上げするのは適切でない」と指摘しつつも、「現状は最大雇用に近づいており、加えて、高インフレにある中では利上げまでの期間は(過去のテーパリング後の利上げのように)それほど長くないだろう」と、テーパリング終了予定の2022年3月以降、早期に利上げに踏み切る可能性を示唆した。

(宮野慶太)

(米国)

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