2021年度の米財政赤字予測をGDP比13.4%に引き上げ、過去最大の2020年度14.9%に迫る

(米国)

ニューヨーク発

2021年07月06日

米国議会予算局(CBO)は7月1日、2月に発表した中期財政見通しに関する報告書(2021年2月15日記事参照)を改定外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、2021年度(2020年10月~2021年9月)の財政赤字額が約3兆ドルとなり、GDP比は13.4%になるとの見通しを示した。財政赤字額は過去最大となった2020年度の3兆1,290億ドル、GDP比14.9%に迫ると見込まれている。前回2月時点の財政赤字額2兆3,000億ドル、GDP比10.3%の見通しから大きく悪化した(添付資料図参照)。今回の改定では、3月11日の「米国救済計画法」(2021年3月16日記事参照)成立などを反映されているが、現在議会で調整中の「米国雇用計画」「米国家族計画」は反映されておらず、これらの対策が赤字国債で賄われる場合、2021年度の財政赤字はさらに膨らむ可能性もある。

報告書では、2021年度から2031年度までの経済見通しや債務残高なども改定されている。新型コロナウイルス対策などの財政政策による押し上げ効果を反映し、2021年の実質成長率を6.7%へと大きく上方修正(2月の発表時点では4.6%)するとともに、2022年の実質成長率も5.0%(2月の発表では2.9%)へ引き上げており、高成長が持続すると見込んでいる。また、最近の急激な物価上昇を反映して、2021年の物価上昇率を2.6%に上方修正するとともに(2月の発表では1.6%)、その後も約2%の安定的な上昇率を見込んでいる(添付資料表参照)。2021年度末の債務残高はGDP比103%と、2月の予測値(102%)よりも悪化しているが、実質成長率の上方修正を受け、2031年度の予測値は106%と、2月時点の予測値(107%)からは改善している。

他方、今回の見通しでは2023年に連邦準備制度理事会(FRB)による利上げを見込み、2023年のフェデラル・ファンド(FF)金利を0.2%としている。2021年6月15、16日の連邦公開市場委員会(FOMC)では、2023年までの利上げを見込む意見が大半であるものの、2022年の利上げを見込む意見も一定数存在した(2021年6月18日記事参照)。仮に利上げ時期が2022年となれば、利払い費が増加することによって、さらなる債務残高の増加も予想される。

経済活動の正常化が進むが、「米国雇用計画」の財源として掲げられていた法人税増税はいったん撤回されているなど(2021年6月25日記事参照)、財政健全化への道筋はまだまだ見通せないのが現状といえる。

(宮野慶太)

(米国)

ビジネス短信 31972d8461501cba

ご質問・お問い合わせ

記事に関するお問い合わせ

ジェトロ海外調査企画課
E-mail:j-tanshin@jetro.go.jp

ビジネス短信の詳細検索等のご利用について

ジェトロ・メンバーズ

メンバーズ・サービスデスク(会員サービス班)
E-mail:jmember@jetro.go.jp