マクロン大統領、総額80億ユーロの自動車産業支援を発表、国内生産拡大が条件に

(フランス)

パリ発

2020年05月28日

マクロン大統領は5月26日、新型コロナウイルスの感染による影響で深刻な状況となった自動車産業に対し総額80億ユーロの支援計画を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。新車購入補助金を引き上げ、40万台に上る新車の在庫削減を支援する代わりに、自動車産業にはバッテリーなど高付加価値部品の国内生産回帰を求めた。

電気自動車の購入補助金(環境報奨金)について、個人向けを7,000ユーロ(現行6,000ユーロ)に、企業向けを5,000ユーロ(現行3,000ユーロ)に増額する。さらに、新たに充電式ハイブリッド車の購入も補助金の対象に加え、2,000ユーロを支給する。同時に充電ステーションの整備を加速し、10万カ所の充電スポットを2022年から2021年に前倒しで設置する。

買い替え補助金については、対象となる低所得世帯の課税所得基準を1万8,000ユーロ以下(現行1万3,489ユーロ以下)に引き上げることで、適用対象を人口の75%まで広げる。低所得世帯が内燃自動車(中古車を含む)を購入した場合は3,000ユーロ、電気自動車や充電式ハイブリッド車を購入した場合は5,000ユーロを支給する(注)。ただし、適用は同措置が発効する6月1日以降に購入された20万台に限定される。

マクロン大統領はさらに、自動車セクターのデジタル化やイノベーションのためにおよそ10億ユーロを投資するとした。一方でマクロン大統領はこうした国からの支援を受ける見返りに、産業側から国内生産回帰など一連のコミットメントを得たと発言。グループPSAは2021年に国内で電気自動車とハイブリッド車を13万台生産するほか、2022年までに国内工場に3億6,000万ユーロを投資し、国内の生産体制を強化するとした。

ルノーについては、国内における電気自動車の生産台数を2022年に3倍、2024年に4倍に増やし、24万台の目標達成を目指すことや、次世代電気モーターの開発計画をアジアから国内に移すこと、独仏で進める欧州バッテリーアライアンスに参加することなどで合意したと説明した。さらに大統領はルノーに対し(合理化の対象に挙がっている)北部ドゥエ工場とモブージュ工場の将来について政府、地方議員、労組、下請け企業など関係者と協議を行うよう求めた。ルノーに対する50億ユーロの政府保証融資は同協議の結果に左右されると述べた。

マクロン大統領は今回の計画の中で、電気自動車・ハイブリッド車の国内の年間生産を今後5年間で100万台に増やし、フランスを欧州最大の低公害車生産国にすることを目標に掲げた。

(注)例えば、低所得世帯が2006年1月以前に新車登録されたディーゼル車を廃車処分し、電気自動車の新車を購入した場合、環境報奨金と買い替え補助金を合わせ1万2,000ユーロの補助金が支給される。

(山崎あき)

(フランス)

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